題名:CGを用いたLabanotation可視化の一手法

中手 慎

1.はじめに

 舞踊作品における身体表現の記録において舞踊譜が使われている。その中でも

Labanotationは細かい身体の動きでも記述することができることや時間を細かく分割

することができることなどの理由から詳細な身体運動の記述が可能であり、その利点

から最も広く用いられている。しかし、Labanotationを自由に読み書きするためには

大変な労力がかかる。また、Labanotationだけで運動をイメージすることが難しいと

いう問題点がある。

 そこで、その問題を解消するために、Labanotation可視化システムを提案する。他

の研究でのCGによる可視化は、今のところ離散的な時間におけるポーズの再現のみを

目指している。しかし、運動をイメージする場合、離散化されたデータでは不十分で

ありこれを補間することが必要であると考えられる。そこで、今回は特に離散データ

の補間による動画の生成に取り組んだ。

 

2.舞踊譜Labanotation

 Labanotationは各身体部分の運動を、それぞれの部分に対応した縦の行(column)に

置かれた幾何学的なシンボルのシーケンスによって表現する。

 Labanotationには記述された内容に曖昧さがないことや、複雑ではあるがルールに

従えば記述や解読ができることという特徴がある。しかし、その複雑なルールを理解

するためには膨大な知識が要求され熟練を要する。一方で計算機による処理を行う場

合複雑であってもルールに従って記述できる方がよい。そのため、複雑な動きが記述

できるLabanotationが計算機による動作記述と再生には向いている。

 ただし、他の研究では、Labanotationデータを用いたCGによる舞踊の自動再現のた

めの動作補間に関する研究はなされておらず、他の研究でのCGによる可視化は、今の

ところ離散的な時間におけるポーズの再現のみを目指している。しかし、離散化され

たデータであるLabanotationではこれを補間しなければ人間らしい動きを再現できな

い。そこで、本研究では離散データの補間という点に焦点を当てている。

 

3.Labanotation可視化システムのアーキテクチュア

 本研究で提案するLabanotation可視化システムは四つの段階からなる。始めは、

Labanotationに用いられる記号の形をしたブロックを用意し、それを使って

Labanotationをシーケンサ的に記譜する「入力インタフェース」である。続いて、描

かれているシンボルの組み合わせから各時刻での姿勢を解釈し、その姿勢を実現する

ための各関節の角度を計算する「Labanotationの解釈」がある。そして、解釈によっ

て得られた離散的な動作データを三次スプライン曲線で補間し動作データを作る「動

作データ補間」、最後に補間された角度を用いて身体表現をCGで可視化する「CGの出

力」となる。この四段階を経てLabanotationが可視化される。

 

4.実験

 三次スプライン補間および一次補間により補間されたデータと実際の人間の動きか

ら得られたデータのエラー値を比較することにより、三次スプライン補間と一次補間

のどちらが人間の動作に近い動きを再現できるかの評価を行った。その結果、三次ス

プライン補間のほうがエラーが少ないという結果が得られた。これより三次スプライ

ン補間のほうが一次補間よりもより人間の動作に近い動きを再現することができると

考えられる。

 

5.まとめ

 本研究ではLabanotationが膨大な体系であり初心者には記述や解読が難しいという

点に着目し、その問題を解決する方法として従来の研究ではなされていなかった、動

作データの補間を用いた人間らしい動きの再現という点に主眼をおいたLabanotation

可視化システムを提案した。また、一次補間と三次スプライン補間という二つの方法

を挙げどちらの方法がこのシステムに適しているかを評価する実験を行った。この評

価実験により三次スプライン補間の方が一次補間よりも人間に近い動きが再現できる

という結論を得た。

 今後は、今回提案したシステムにおける「入力インタフェース」、「Labanotation

の解釈」の部分について研究をより進めていく必要がある。そして、最終的にはこれ

らを一つのシステムとして統合することが望まれる。