2000年度修士論文概要

学籍番号 90417056 所属研究室 藤井研
氏名 山 本 博 之
タイトル 拡張されたILQ設計法に基づく制御系CADの開発
はじめに

本CADが対象としているILQ最適サーボ系設計法は,最適レギュレータの
逆問題を応用し,漸近的閉ループ系の非干渉化極配置ゲインとサーボ系の
最適性を保証する調整パラメータによって制御則を決定できる.

極配置と調整パラメータの決定には試行錯誤が必要とされるため,
CADによる支援が必須となる.CADに要求される機能としては,
設計と評価を同時に並行して,かつ円滑に行えることなどがあげられる.

このILQ設計法に基づいたCADは既に開発されているが[1],既にいくつかの
拡張された理論による設計法が存在する[3][4][5].本研究の目的は,それらの
理論を用いて,制御対象を従来の最小位相系[2]から,直達項を含む非最小位相
系[3]にまで拡張し,かつ優れたユーザインタフェースとプログラム構造をもつ
CAD(名称: ILQCAD21)を設計・実装することである.


本CADの特徴

本 CAD は,ユーザインタフェースの構築にMATLABの持つGUI機能を用いており,
バージョン5.3以降のMATLABで動作可能である.

開発に際して特に留意したのは,直観的で効率の良いインタフェースと,
可読性が高く,将来の修正・拡張が容易なプログラム,の2点である.

本CADのインタフェースにおける特徴は,(1)制御系の設計作業を直観的にかつ
素早く行うことができる,(2)設計パラメータを変更した際の試行錯誤が容易に
行える点である.

例えば,左上のブロック線図で現在の進行状況が一目で分かるように色分け表示
される.また,右ではスライダを用いて容易にパラメータを変更でき,その結果
を左下のグラフで即座に確認できる.

また,プログラムの構造に関しては,オブジェクト指向的な方法論,たとえば
情報のカプセル化,抽象化,オブジェクト同士のメッセージパッシングなどの
考え方を用いることにより,可読性が高く,修正・拡張が容易な設計と実装を
目指した.


ILQCAD21による設計の手順

設計は基本的に,
(1) プラントパラメータを読み込む,
(2) 参照入力を指定する,
(3) 漸近極を指定する,
(4) 調整パラメータΣを決定する,
という手順で行う.

また,必要に応じて全次元または最小次元オブザーバの指定,そして
ノイズや外乱のシミュレーションを行うことができる.


おわりに

本研究の目標は,理論の拡張やユーザインタフェースの向上という点ではある程度
達成されているのではないかと思う.しかし,インタフェースや機能,性能面で,
まだ改善の余地が残されている.それに加え,さらなる拡張として,自由パラメータ
を用いた設計法[4][5]にも適用できるようにすることなどが今後残されている.


参考文献

[1] 松村: グラフィカルな操作環境を持つILQ制御系CADの開発 (1997)
[2] 黒江,阿部,藤井: 参照入力を一般化したILQ最適サーボ系設計法,
計測自動制御学会論文集, 32-4, 539/546 (1996)
[3] 黒江,藤井: 参照入力と制御対象を一般化したILQ最適サーボ系設計法,
計測自動制御学会論文集, 34-3, 195/202 (1998)
[4] 酒井,藤井: ループ整形機能を有するILQロバストサーボ系の解析的設計法,
計測自動制御学会論文集, 36-4, 340/347 (2000)
[5] 酒井,藤井: フィードフォワード側の自由パラメータを活用したILQ設計法の拡張,
計測自動制御学会論文集 (投稿中)