2000年度修士論文概要

学籍番号 90408031 所属研究室 豊田研
氏名 田 村 武 利
タイトル 協調学習における学習グループ構成支援
1. 序論

 近年の情報通信技術の発達、ネットワークの普及に伴い、地理的に分散した環境で
の協調学習形態の実現が技術的に可能になった。それと共に複数の分散環境下におい
て協調学習の場を実現し、それを支援するCSCL(Computer Supported Collaborative
Learning)の研究、開発が盛んに行われている。一方、協調学習の有効性を示唆する
様々な学習理論が存在し、協調的に学習することによる豊富な学習効果が示唆されて
いる。協調学習において、学習者間の相互作用は学習グループに強く依存するので、
学習理論に沿って協調学習環境(学習グループ)を設計すれば、効果的な学習が期待
される。しかし、学習理論に基づいた学習グループを構成するには困難を伴う。そこ
で、本研究は学習理論に基づいた学習グループの構成を支援するシステムの構築を目
指す。



2. 学習グループの構成と学習理論

 学習理論に基づいたグループを構成するためにはいくつかの問題点が存在する。

1.多種多様な学習理論の中から適切な理論を選定するのは困難

2.適用する学習理論が一意に決まった場合でも、学習目的とそれを達成するために
必要な相互作用やグループ形態との関連については十分に整理されているとはいえ
ず、グループ構成に適応するのは困難

 本研究は、協調学習参加者に効果的な学習グループの構成を支援することを目的と
する。構成されたグループの妥当性を保証するために学習理論を採用し、それに基づ
くグループ構成を支援するTGF (Theory-based Group Formation) Support System の
構築を行う。本システムの特徴としては、ユーザは学習理論を理解せずに、理論に基
づいた学習グループを組むことができ、参加者全てに何らかの教育的効果が期待さ
れ、学習者の状態に応じた役割を設定した学習グループを構成するという点が挙げら
れる。



3. システムの概要

 本システムは、学習理論から様々な学習目的を抽出し、共通の用語と枠組みを用い
て整理した学習目的オントロジーをデータベースとして持ち、それを参照・検索する
ことによってグループ構成を行う。学習者の目的、状態を入力することで、グループ
構成をテキスト形式で出力する。グループ構成は、学習場全体の目的と、参加する学
習者の情報で示される。参加する学習者の情報は、役割、相互作用目的、個人の達成
目的、現在の状態で示される。さらに、これらの情報をよりわかりやすくするために
単純化されたイラストで表示することも可能である。



4. 結論

 協調学習における学習グループ構成支援システムとしてTGF Support System の構
築を行った。本システムを使用することでユーザは、学習理論を意識することなく、
効果を理論に保証された学習グループを構成することが可能になった。

 教師による試用を通じた評価においては、教師の意思決定において1つの情報を提
供し、新しい知見を与えてくれるシステムとして、有益であるという評価が得られ
た。

 今後の課題としては、学習理論について全く知らないユーザでも使用できるように
平易な用語での表現及びヘルプ機能の充実、そして複数の学習者の状態入力に基づく
グループ構成への対応等があげられる

Hoppe and Tardos:
The quickest transshipment problem. Mathmatics of Operations Research, 25
(2000)36-62.