2000年度修士論文概要

学籍番号 90408014 所属研究室 藤井研
氏名 國 中 威 志
タイトル 連続時間系におけるデスクリプタシステムの部分空間同定法について
はじめに

物理パラメータを陽に表現したり,非因果的なダイナミクスを表現する手法として,
デスクリプタシステム(DS)が提案されている.一方,状態方程式のパラメータを入出
力データから同定する手法として部分空間法が提案されている.従来の部分空間法は
離散時間系で考えているが,システムの構造や動的なパラメータを知りたい場合連続
時間系で考えるのが理想的である.そこで,本研究では連続時間DSを同定する手法と
してラゲールフィルタの適用を提案する.そして数値例を用いて検証および評価を行
うことにより,その手法の有効性を検討することを目的とする.

連続時間系DSの部分空間法

ここでは連続時間系におけるデスクリプタシステム
E dx(t)/dt = Ax(t) + Bu(t)
y(t) = Cx(t) + Du(t)
を同定する問題を考える.このときにオールパスフィルタω=(s-a)/(s+a)を用いたラ
ゲールフィルタLj(s)=(1-ω)ω^jを用いて上のデスクリプタシステムを変形すると
ωx(t) = A'x(s) + B'(1-ω)u(s)
(1- ω)y(s) = C'x(s) + D'(1-ω)u(s)
ここで,A'= (A+aE)^(-1) (A+aE), B-'= (A+aE)^(-1) B, C'= 2aC(A+aE)^(-1),
D'= D - C(A+aE)^(-1).この式をもとに入出力データの公式を得る.さらにデータ公
式まで導くことができると,部分空間法で行列[A',B',C',D'-]を求めることができる
.またこれらから行列[E,A,B,C,D] が求まる.

数値例

機械システムのバネマスダンパ系を例にとり,提案した同定法を検証する.入力を
F = bu(t),出力を平衡点からの変位として考えるとM:質量,D:粘性摩擦係数,K
:バネ定数,b:入力ゲインを未知パラメータとする.そこで,2階の微分方程式を解
くことにより作成した入出力データを得て,先述の方法により[E,A,B,C,D]を求める
.この得られた結果をシミュレーションした結果と出力データを比較すると破線と実
線が重なっているのでこの同定アルゴリズムは正常に機能しているといえる.またシ
ステムの構造が事前にわかっている場合,つまり2階微分方程式で表されるシステム
とわかっているとき,ラゲールフィルタの時定数aを変化させたり,入出力データに
スケーリングαを掛けることで理論値に一致する同定が可能であることがわかった.

結論

提案した手法により連続時間DSのパラメータを求める手法の妥当性が検証できた.し
かし,変換行列倍の自由度が存在するので厳密には連続時間モデルを得ることはでき
ない.これは今後の課題である.また,対象が機械システム等の場合入出力のスケー
リングや,フィルタの時定数が正確なパラメータを求めるための1つの指針となりう
ることもわかった.しかし,デスクリプタシステムの有効性や,さらにこの同定によ
って実際のモデルを導出するといった点では更なる検討が必要である.