2000年度修士論文概要

学籍番号 90189026 所属研究室 井口研
氏名 内 田 貴 之
タイトル テクスチャ投影型複合現実感ディスプレイにおける影付け表現に関する検討
1. はじめに
現在のディスプレイ技術では、2次元であるコンピュータなどのディスプレイにおいて3次元立体形状を見る感覚が失われ、実世界中の物体を忠実に表現することは困難である。そこで、複合現実感ディスプレイの一つとして実物体をスクリーンとするテクスチャ投影型が有望視されている。この方式は、実空間で実際に目視している物体に対してコンピュータ上で合成した表面属性情報を光学的に重畳させることで、高い質感や立体感を表現するものである。
これまでに提案されたテクスチャ投影型のディスプレイは、スクリーンとなる実物体は静止あるいは回転のみを想定しており、実物体の移動には対応していなかった。すなわち、実物体が移動すればテクスチャがずれ違和感のある複合現実感ディスプレイとなってしまう。そこで本研究では、物体の移動に追従してテクスチャを投影するために物体追跡を行った。そして、得られた位置・姿勢情報をもとに移動する物体に対して影を表現するための検討を行った。

2. 提案MRディスプレイ
仮想影を表現する方法として、テクスチャの場合と同様にコンピュータ上で影画像を合成し床面に投影する。影の投影位置や姿勢を決定するために実物体の追跡、位置・姿勢検出を行い、影画像の合成に光源の位置情報を与えて影の位置や形状に反映させる。具体的には、仮想光源として磁気センサを用い、センサから得られる座標を光源位置としてその影を作成した。センサを手に持った観察者が仮想光源を移動させ、それに伴って影を変化させることができ、複合現実環境にインタラクティブ性を持たせることができる。

3. まとめと今後の課題
テクスチャ投影型MRディスプレイにおいて、移動物体に対するテクスチャ投影を可能にするための物体追跡を行った。また、仮想光源とみなした磁気センサから得られる座標を光源位置として、移動する物体に対して影付けを行った。観察者がセンサを手に持って仮想光源を移動させ、それにともなって影の付き方を変化させることが可能であり、複合現実環境とのインタラクティブな関係を構築することができた。また、実物体の影を表現することで物体の存在感高いリアリティのある複合現実環境を構築できた。今後は、複数物体に対する影付けや本システムの3次元への拡張について検討していく予定である。