2000年度修士論文概要

学籍番号 90139167 所属研究室 新井研
氏名 牟 禮 龍 陽
タイトル リムメカニズムの不整地歩行に関する基礎的考察
1.研究の背景・目的
 危険が伴う災害救助活動などで,人間の活動を助ける作業移動型ロボットの開発が
求められている.
 作業移動型ロボットの一形態として,腕と脚が渾然一体となった機構を持つ""リムメ
カニズム""が提案されている.本研究では,筆者の所属する研究室でリムメカニズムの
プロトタイプとして開発された""ASTERISK""が持つ特徴を踏襲しつつ,不整地歩行に対
応できる試験機を新たに製作し,同時に不整地歩行に有効な脚軌道を提案する.

2.""ARTEX""の設計・試作
 ASTERISKが持つ機構は,踏み変えなしの方向転換が可能であり,遠隔操作すること
ができる.これは狭隘で危険な現場での運用に有効であるが,ASTERISKは十分な不整
地踏破能力を持たないという欠点がある.
 そこで,新たに不整地歩行に対応できる試験機""ARTEX(Asterisk Rough Terrain
walk EXamination type)""を設計・試作した.ARTEXはリム先端に感圧ゴムによるタッ
チセンサを装備しており,それによって接地を確認し,リムの軌道を変更する.ま
た,ASTERISKに比べて本体下側の動作領域が大きく,不整地踏破能力が高い.

3.円柱形脚軌道
 以下ではARTEXに不整地での歩行を適用させる場合の手法について述べる.
 リムメカニズムが不整地において,物体を把持した状態で安定に移動するために
は,各リムの接地高さが異なっても,本体の傾きを水平に保つことが必要だと考えら
れる.そこで,リム先端のセンサを用いて不整地を歩行するための脚軌道として,本
体下部のリムの可動領域内に内接する円柱形を考え,この外周に沿うような軌道を描
く「円柱形脚軌道」を考える.
 基準高より高い位置(凸地)で接地を感知した場合,その高さでいったん静止し,そ
こから他の支持脚と同時に復帰動作を行うことで,他の支持脚と同じストロークを得
ることが可能となる.基準高で接地をしなかった(凹地)場合は,すでに接地している
脚を曲げ,本体位置を相対的に下げることによって,ベースの姿勢維持が可能とな
る.また,移動方向が変わった場合でも同じアルゴリズムで軌道を生成でき,ARTEXの
全方向的機構を活用することができる.

4.結論
 本研究では,不整地歩行に対応できるリムメカニズムの実験機として,""ARTEX""を試
作した.
 ARTEXでは,従来機が持つ特性(全方向性,遠隔操作可能)に加え,本体下部の可動領
域を拡大し,接地高さを判別するためのセンサを搭載した.さらに,不整地歩行のた
めの脚軌道のひとつとして,円柱形脚軌道を提案した.
 今後は,実機による歩行試験により円柱形軌道の検証をするとともに,不整地での
作業移動についての性能を評価することが課題である.現在のシステムをさらに改良
し,実環境へのリムメカニズムの投入の基礎を築きたい.