2000年度修士論文概要

学籍番号 90119131 所属研究室 井口研
氏名 原 田 久 美
タイトル フォースフィードバックを用いたポインティングデバイスの提案
はじめに
 誰にとっても直感的で使いやすい操作を実現するために,手の位置や動きを用いてディスプレイ上のメニューやアイコンを選択するユーザインタフェースが検討されているが,選択操作については,手ぶれに加え手の位置姿勢検出でノイズがのるため,メニューやアイコンを確実に選択できないという問題がある.また、視覚フィードバックのみではメニューやアイコンを選択したという感覚が直感的には得られず,逆にこれが使いにくい原因となることが実験によりわかった.そこでこれらの問題点に対する解決策として,フォースフィードバックを用いたポインティングデバイスを提案する.

2 フォースフィードバックを用いたポインティングデバイス
 システム構成を図1に示す.本システムは,ポインティング部とフォースフィードバック部に分けることができる.ポインティング部では,手元のデバイスに位置検出用のマーカーを装着し,CCDカメラからマーカーの位置をセンサで計測,手の位置情報をPCに取り込む.フォースフィードバック部にはデバイスの可動部の傾きを利用する.手の親指と人差し指で可動部を挟み,可動部の左右への傾きをフォースフィードバックとしてユーザに返す.可動部の傾きは、PCからの信号を送信機を介してデバイスに送ることで制御する.

3 メニュー選択におけるフィードバック
 デバイスの可動部の傾きをフォースフィードバックとする1次元のメニュー選択システムを作成する.以下ではポインティング部とフォースフィードバック部の関係を述べる.隣接するメニューボタンへ移動する場合,可動部は境界領域に近づくと移動方向へ傾き,境界領域を過ぎると中心へ戻る.つまり,境界領域に近づき通過したことをフォースフィードバックで知ることができる.視覚フィードバックについては,メニューボタンの色変化により現在選択されているメニューを,またユーザが指し示す手がディスプレイのどの位置に対応しているかというカーソルを示す.

4 実験および結果
 フォースフィードバックがポインティング操作において有効であるかどうかを検討するため,フォースフィードバックがある場合とない場合それぞれについてメニュー選択実験を行った.被験者は10人の大学生である.各タスク毎の操作時間とエラー回数,実験後のアンケートをもとに評価を行った.詳しい解析結果は本論文中で述べる.
 平均エラー率はフォースフィードバックがある場合2%,ない場合は4%であり,フォースフィードバックは選択操作を容易にすることができると言える.またアンケート調査のうち,(a)メニュー間の移動をフォースフィードバックにより得られたか,(b)フォースフィードバックはメニュー間を移動したという感覚を表すのに適切であった,(c)フォースフィードバックはあった方が良いか,という3つの質問に対しては,80%以上の被験者が肯定的な回答が得られた.つまり,フォースフィードバックはユーザに好意的に受け入れられたと考えられる.

5 まとめ
 使いやすいポインティングデバイスの実現に向けて,フォースフィードバックを用いたデバイスを作成し,実装した.手元を見ることなしに直感的に選択したという感覚の得られる本デバイスは,特に視力の焦点機能の衰えている高齢者ユーザなどに非常に有効であると考えられる.