ヒューリスティックによるアルミニウム加熱炉へのスラブ挿入本数最大化

田村研究室  原田 貴子

1. はじめに

アルミ板製造における熱間圧延工程は,被圧延材であるスラブを加熱炉で所定の温度まで加熱する加熱工程と,加熱されたスラブをアルミコイルに加工する圧延工程から構成されている.アルミ板製造では,十数本のスラブを1つの炉で同時に加熱するため,決められた圧延順序の下で,同一加熱条件のスラブをできるだけ数多く1つの加熱炉に挿入することが重要な課題となる.本研究では,加熱炉へのスラブ挿入本数最大化問題に対し,ヒューリスティックと列挙法を組み合わせた解法を考えた.

2. 加熱炉へのスラブ挿入問題

アルミニウム加熱炉へのスラブ挿入問題とは,圧延順序が決定したスラブを加熱炉への挿入本数が最大となるように加熱炉へ配置する問題である. スラブの加熱炉への搬入出は,クレーンにより行われる.このため,搬送するスラブと隣のスラブとの間,炉壁との間に,クレーンの掴み隙間が必要である.隙間の幅はスラブのサイズ,隣接するスラブのサイズによって変わってくる.また,加熱炉内でのスラブ配置方法は縦・横・斜めの配置が許されており極めて自由度が高い.さらに,加熱炉へ挿入するスラブの圧延順序はあらかじめ決められており,その圧延順序に従って取り出すことが可能でなければならない. 以上の全てを考慮することは非常に困難なので,本研究では取り出し順序とクレーンの掴み隙間のみを考慮した.さらに,必要隙間は一定としスラブの幅方向の隙間も無視した.

3. 解法

Step 1: 炉の左下から横置き配置を2列行う.1列毎にスラブの長さの降順に下からソートする.1列目の上部--炉壁間に隙間がある場合,1列目と2列目の適当なスラブを交換し,隙間を減らす.
Step 2: 1列目と2列目間の隙間に縦置き配置を行う.縦置きするスラブ,位 置の候補を全列挙する.まだ選ばれていない候補を1つ選び,Step 3へ.
Step 3: さらに,残ったスラブを配置する向きを決め,残りスペースに配置する.向 きについては全探索を行い,全てのスラブが配置されたら終了.そうでなければStep 2へ.

4. まとめと今後の課題

本研究では,バッチ式加熱炉へのスラブ挿入本数最大化問題に対して,ヒューリスティックと列挙法を組み合わせた解法を提案した.今後の課題としては,より実際の問題に近づけるため,以下のようなことが考えられる.
  1. 斜め置きを考慮する.
  2. クレーンの掴み隙間幅をスラブの大きさにより変化させる.