腕脚統合型ロボットの設計と試作

新井研究室  高橋 裕也

1. はじめに

近年、宇宙開発や海底探査、災害現場などの危険な場所において、作業移動型ロボットの有効性が注目されている。
本研究では、作業移動型ロボットとして、災害現場において人体探査および救助を目的とする腕脚統合型ロボットASTERISKの設計と試作を行う。

2.概念設計

腕脚統合型機構とは、作業移動型ロボットの脚機構を腕機能に転用あるいは統合する事によって、機構の小型化・軽量化を図りつつ、ロボット全体としての作業領域や発生力などの作業能力を向上させる事の出来る機構である。概念設計においては、レスキュー活動を想定し、下記に示す仕様の決定を行った。
脚機能については、4脚と6脚構成が考えられるが、移動時の安定性と作業しながら安定な移動が可能であることから6脚機構とする。また、レスキュー活動ではあらゆる状況が想定されるため、本体の全方向に対して移動能力を持つよう、6脚を本体中心に等間隔に配置する。腕機能に関しては、6脚すべてにハンドを取り付け、そのハンドは軽量化のため1自由度のクリッパとする。その他、操縦者の安全を確保するため、無線による遠隔操作を行い、機構の変更やメンテナンスを簡単にするため、各要素はモジュール化を行う。また、動作領域に関しては、腕としての働きを重視し、本体上部に広く取る事にする。

3.詳細設計

概念設計に基づき、詳細な設計を行った。 アクチュエータにはラジコン用サーボを用い、遠隔操作とモジュール化を実現した。アクチュエータの選定とリンクパラメータの導出には、サーボの発生トルクを満たしつつ、動作範囲が最大になるよう決定した。

4.ASTERISKの性能

Fig.1に、本研究で試作されたASTERISKを示す。また、脚一本あたりの到達可能領域をFig.2に示す。
重さは約2[kg]で、基本姿勢時と脚をすべて伸ばした時の幅・高さを表1に表す。



Fig.1 腕脚統合型ロボットASTERISK



Fig.2 ASTERISKの到達可能領域

表1 ASTERISKの大きさ(単位mm)
 基本姿勢時脚を全開
約400約600
高さ約250約100

5.結論

本研究では、腕脚統合型ロボットを開発した。今後の展望としては、本機のハンドリング能力や発生力などの性能評価、運動学導出や動作生成などの理論的解析やシミュレーションなどを行い、そこから得られた結果を元に、さらなる能力向上を図りたい。