カラー画像と距離画像を用いた
固有空間法による物体の姿勢検出


井口研究室     森岡 義貴


1 はじめに

パラメトリック固有空間法による物体認識には,濃淡画像を利用した方法, 距離画像を利用した方法がある.濃淡画像を用いたパラメトリック固有空 間法では,照明条件の変化の影響を受けやすい.それに対して距離画像を 利用したパラメトリック固有空間法では,照明条件の変化に対して不変で あるという利点がある.しかし,距離画像を用いたパラメトリック固有空 間法では,回転軸に対して対称な形状の物体の姿勢検出ができない.そこ で,本研究では距離画像とカラー画像を用いた固有空間法による姿勢検出 の方法を提案する.



2 色相による距離画像のセグメンテーション

3次元物体の見かけの画像は,その物体の方向や照明の位置により大きく 変動するが,物体の色味はさほど変化しないと考えられる.そこで,カラ ー画像列から色味を表現している色相画像列を生成する.物体の色相ヒス トグラムはいくつかの領域に分割でき(図1),この分割した領域に対応 する色相値をもとに距離画像を分割する.距離画像を色相値を用いて分割 することで,回転軸対象な物体の距離画像も,回転軸にたいして非対称な 形状の物体における距離画像と同様に扱える.こうしてセグメンテーショ ンされた距離画像列から複数の固有空間を作り姿勢検出を行う.


図1 色相ヒストグラム

3 照合と評価

固有空間は,先の距離画像のセグメンテーションにより複数生成さ れているので,姿勢検出結果も複数個ある.ある色相領域において は距離値が得られなかったり,オクルージョンなどにより極端に有 効な画素が減少するので,信頼性に欠ける検出結果もある.そのた め,これらの検出結果の中でどれが最も確からしいのか評価する必 要がある.有効な画素の少ない画像は固有空間上に投影すると,平 均画像の投影点と原点に対して対称な点(マイナス平均画像の投影 点)の近傍に投影される(図2).よって,この点と,対象画像の 投影点の位置ベクトルのなす角が大きいほど信頼性が高いと言え, これを評価値(図2)として姿勢を決定する.評価値は,このベク トルのなす角(偏角)を求める関数(評価関数)によって求めら れる.




図2 固有空間と評価値

図3 実験対象

4 実験結果

対象物体に青,赤,緑,黄色の折り紙をはった立方体 (図3)を用いて姿勢検出を行った.対象物体を回転 ステージで回転させ,距離画像,カラー画像を撮影し て学習画像列とした.本手法を用いて姿勢検出を行っ た結果を,距離画像だけを用いて姿勢検出を行った結 果とあわせて図4に示す.

図4 距離画像を使った検出結果(左) 本手法による検出結果(右)



5 まとめ

図4から分かるように,本手法により姿勢検出の 安定性が向上した.また,ここには結果を示さな かったが照明条件を変化させても同様に安定した 検出結果結果が得られた.しかし,今回の手法で は物体表面の小さな模様などを無視しているため, 回転軸に対して対象な形状の物体で,物体表面の 小さな模様によって姿勢が特徴付けられるものに 対しては姿勢検出することができない.今後,こ の点についても検討する必要がある.