静止環境地図とロボット自己位置の同時推定

谷内田研究室  濱田 博昭

1. はじめに

ロボットが自律移動するためには、外界の情報をセンサから獲得して環境の位 置を把握する必要がある。我々はロボットの誘導に適したセンサとして全方位 視覚センサを提案し、そのシステムを構築してきた。本センサの視野範囲は環 境地図を構築する上でもっとも重要な側方が中心であり、人工環境において多 数存在する垂直エッジが放射状に投影されるという特徴がある。 本報告では、全方位視覚センサを搭載した移動ロボットを対象に、観測対象の 方位変化から自己の位置姿勢を推定し、かつ環境地図を同時に生成する方法を 提案する。

2. 全方位視覚センサ HyperOmni Vision

全方位視覚センサHyper Omni Visionは一度に周囲360度を観察できる。こ の特徴より、本センサからの入力画像を極座標変換し、微分処理を行うことに より、環境内における垂直エッジの方位角を知ることができる。これを各エッ ジについて時系列間で対応付けることによってエッジの位置を推定する。

3. 環境地図の生成および自己姿勢推定

従来手法では3観測点で3個の対象物が発見できれば自己位置推定および、環 境地図の生成が可能であった。しかし、ロボットの自己姿勢は地磁気センサ等 からの情報があり、既知としていた。 本手法では従来既知としていた自己姿勢に関しても観測対象の観測方位の変化 量から推定し、その情報から環境地図及び、自己位置を推定することを特徴と する。 自己姿勢の推定方法として次の手法を用いた。 まず、各フレームにおけるエッジの位置を推定し、その値と1フレーム前のエッ ジの位置との差を観測方位の変化量とする。 ロボットの動きは滑らかとすると、観測方位の変化量がロボットの姿勢変化に 対して小さく、進行方向に対しても小さいことを意味する。環境中での距離分 布がロボットの周囲で同じぐらいと仮定すると、観測方位の変化量は正弦関数 で近似でき、その近似された正弦関数のオフセット値がロボットの姿勢となる。 この結果をもとに従来法で地図生成、自己位置推定を行う。ただし、実環境の 場合、環境中での奥行きは一様とは限らない。そこで、本手法では姿勢推定の 際の関数近似に生成された地図情報の補正を加えることで正しい姿勢推定を行 い、地図を再生成する。また推定した姿勢変化から地図を生成し、再び回転角 度を求めるといった一連の処理を繰り返すことにより、推定誤差の減少が減少 すると考えられる。    

4. 実験及び結果

図のような環境でロボットに直進運動させて実験を行った。 実験方法は最初対応付けられたエッジから各点におけるロボットの回転角度を 正弦関数近似から推定する。その推定姿勢から地図を生成し、その地図から姿 勢推定をする。この処理を繰り返すというものである。 実際に行った結果では、最初の1回目に推定した地図は誤差が大きいが、3回 目、4回目になると、誤差が小さくなり、過去の手法と比較しても、同程度の 精度で地図を生成することが可能となった。

5.結論

ロボットが滑らかに運動するという条件のもとで、自己姿勢を推定でき、それ を用いた静止環境地図の生成および自己位置の推定が可能であった。 また、本手法で生成した環境地図と推定した自己位置は、自己姿勢が既知の場 合と同程度の精度であった。