パラレルアームのハイブリッド駆動
湯浅 恵
従来のクレーンにかわる軽量でコンパクトなハンドリング装置を開発することを目 的に、シリンダとワイヤを組み合わせたハイブリッド駆動パラレルアームの基本構造 を提案する。逆運動学と静力学に基づきいくつかの構造を解析しプロトタイプの提案 を行う。

1、はじめに

現在、多くの工場で産業用ロボットが部品の溶接や塗装、組立などに適用されている 。一方、ビル建設の中心となっているのはクレーンである。しかしクレーンは、位置 決め制御や精度、操作性、作業者への安全性などの点で様々な問題点を抱えている。 クレーンにかわるハンドリング装置として、重量物を容易にハンドリングしこれを自 由に操作して目的の場所に正確に位置決めでき、目的の対象物に精度よく組み付ける ことのできるアームの開発が必要である。

2、システム構成

門型の建設システムにおいて、そのハンドリング装置部分に複数のリンクで対象物を 操作するパラレルメカニズムの適用が考えられる。パラレルメカニズムは従来の産業 用ロボットと比較して、大出力の発生、高精度な位置決め、コンパクトな構造で多自 由度の運動が可能、高速運動、逆運動学が容易等の特長を有しており、重量物のハン ドリングは適用分野としては最適であると考えられる。

3、ハイブリッドパラレルメカニズム

対象物の並進と回転の6自由度を完全に制御することを目的に、本アームではベクト ルクロージャの原理に基づき、シリンダとワイヤの総計を7本とするアーム構造を検 討する。パラレルアームの構成法は様々であるが、直動のシリンダを用いるスチュワ ートプラットフォームがよく知られており、本アームの候補としてまず考えられる。 一方、クレーンの振れ止めとして、複数のワイヤで対象物をハンドリングする方法が 提案されている。シリンダは有効ストロークが限られ、また太さがあるため干渉によ りアームとしての可動範囲が限定される。一方、ワイヤは干渉は少ないが張力しか発 生できないため、やはりその可動範囲が限定される。そこで本研究ではさらに軽量で コンパクトなアームを開発するため、シリンダとワイヤを併用して駆動する新しいア ームについて検討し、その力学を定式化すると共にアームの作業性を評価しプロトタ イプを提案する。

4、各構造の提案と解析

次に示すようなシリンダとワイヤの組み合わせを考え、考えられる構造を提案した。

1:  w6
2: c1w6
3: c2w5,c3w4
4: c3w4 (lod added)
 (c:シリンダの本数,w:ワイヤの本数)


逆運動学に基づき手先位置に対してリンク間干渉はないか、また静力学によりその位 置での各リンクの発生力を調べ条件を満たしているかで到達点、境界を調べる。 想定する作業領域において手先を回転させ目的の回転角を実現できるかどうかで各構 造の性能を比較する。

5、結果

解析の結果 c1w6 ,c3w4(lod added)の2種類の機構が実現可能であることが 判明した。

6、今後の課題

ミニチュアモデルの設計試作、そしてそれを使った実験を行っていく予定である。