LTR特性をもつ強正実H2コントローラの構成
山崎 康広
1. はじめに

一般に正実(Positive Real:PR)プラントに,強正実(Strictly Positive Real:SPR) コントローラを結合してネガティブフィードバックすれば,閉ループ系はロバス ト安定になることが知られている.
LSS等のシステムは,センサとアクチュエータが同位置$\cdot$同方向に置かれた (collocate)ときに打ち切り誤差やパラメータ誤差にかかわらずPRになる. このためコントローラをSPRとして設計しておくと,閉ループ系のロバスト安定性 が保証される.
しかし,正実性だけではロバスト安定性は保証されるが,必ずしも良い過渡応答 (パフォーマンス)が得られるとは限らない. これに対しては,時間領域において制御入力を最適化しながら過渡応答の調整が できるH2コントローラが有効である.
そこで,本研究では強正実となるH2コントローラの設計問題を考える. H2コントローラの場合,レギュレータとオブザーバの間によく知られ た分離定理が成り立つが,SPR制約を課すともはや分離定理は成立せずカップリ ング構造が生じる.
このカップリング構造が完全に成立する一般の場合の設計手順はまだ確立されて おらず,今後確立していかなければならないが,本研究ではそれに先立つ研究とし て弱いカップリングをもつ場合Fl=0を考える. このときコントローラはオブザーバゲインがLTR構造をもつ興味深いクラスとな る.
このケースについてEuler-Bernouli の単純支持はりを例に詳細な検討を行 なう.

2. 問題設定

一般化プラントに対してwからzの閉ループ伝達関数をH{zw}(s)とする. Σ{K}がある重み Q_c=C_1'C_1>0, R{c}=D{12}'D_{12}>0 に対してSPRかつ H2最適になるように$K$を決める.したがって,解くべき問題はある重みの制約 のついたなかで,H{zw}の二ノルムを最小にすることである.

3. コントローラ コントローラが強正実かつH2最適となるには以下の構造が必要である.

[パラメータの構造]
K = V^{-1} Σ V [ F I ]M
L' = Vl^{-1} Σ{l} Vl[ Fl I ]M

[レギュレータとオブザーバのカップリング構造]
Σ{vl}(I+FlF')F2=I, Σ{vl}=Vl^{-1} Σ{l} Vl, Σ{vl}=μ/R{c}
F2=V'ΛV

今回の数値例では指定極が与えられるとF,Flが決定され,あとは,レギュレー タのΣ>0,オブザーバのΣ{vl}>0によりコントローラが決定される.
SPR条件およびH2条件はΣの下限値で与えられるため, これらを共に満たすようΣを選定する.
Σ{vl}はLTR特性をもたせるためのμパラメータを含ませ,ロバスト 性の回復に利用する.

4. まとめ 本研究ではLTR特性をもつ強正実H2コントローラの構成に関する 研究を行なった.
ロバスト性の回復を考えると,理想的にはμを無限大とすべきであるが, μを大きくすることによる弊害も生ずる.そこで,各パラメータと位相余裕の 関係を調べた. これにより例えば,少しのμの変化で位相余裕を大きく回復するような数値を 見つけることができ,目的によるΣ ,Σ{vl}の選定が可能であること を示した.
今後の課題として,SPR/H2の各条件を与える共通解・非共通解に よるH2コストの評価,さらにFl≠0とした一般的なカップリング 構造をもつ場合について,その設定手順を確立することなどがあげられる.