合奏時におけるコミュニケーション情報の基礎検討
小田 晃弘
1.はじめに

近年様々な観点から協調型合奏システムの研究が行われてきた.協調には論理的な 側面と感性的な側面があり,最近では後者の方が注目されるようになった.そして感 性協調型合奏システムの研究が多く行われているが,エージェント間でやりとりされ るコミュニケーション情報に関しては,これまで心理実験に基づく知見を導入した例 はほとんどなく,人間の音楽認知特性などは考慮されていなかった.しかし,より協 調を深めるためには音楽をどのように分析したり,どのように感じるかなどの音楽認 知特性を知ることは必要不可欠である.そこで本研究では人間の音楽認知特性を知る ために,「注目度」という観点からアプローチし,注目度に関する心理実験を行う. さらに心理実験の内容を考慮したプロトタイプ合奏システムを構築し,結果について 評価検討を加える.

2.合奏時のコミュニケーション情報

従来の協調型合奏システムでは様々な心理パラメータを用いて協調を目指してきた .本研究では「注目度」というパラメータを定義する.注目度とは「聴き手が,演奏 者の音や演奏パターンに注目させられる度合いを表す指標」と定義する.そして実際 のセッションでは注目を集めるパートが時間の経過により次々と移り変わっていくよ うに,注目度を制御できれば実際のセッションに近い演奏を再現できると考える.

3.コミュニケーション情報に関する基礎実験

3.1実験内容
まずベースやドラムには演奏パターン毎に注目度は存在するのか,またどのような 演奏パターンにより注目度が決定するのかを調べるために,ベースとドラム単体の演 奏パターンの注目度を調べる.さらにベースとドラムの両方が組合わされた演奏パタ ーン(メロディパターンと呼ぶ)の注目度は,両者の演奏パターンの注目度とどのよ うな相関関係があるのかについても調べるために,代表的な注目度を持つベースパタ ーン,ドラムパターンを選んで,両者を組み合わせてメロディパターンを作り比較実 験を行う.
セッションについては時系列な演奏の変化なので,メロディパターンを連続的に変 化させて聴いた場合,ベースとドラムのどのような組み合わせの変化が注目度の変化 を引き起こすのかについても調べる.

3.2実験結果 などが明らかになった.

4.コミュニケーション情報を考慮した感性協調型合奏システム

心理実験の内容を考慮したプロトタイプ合奏システムを構築した.ここでは主演奏 者の注目度を計算し,それに応じて各エージェントの注目度の上げ下げを実現してい る.上げ下げの方法は前節の実験より得られた結果を考慮して行っている.

5.実験と考察

実際に演奏してみた結果,以下のような結果が得られた.

1)演奏に変化があって面白い.
2)自分の演奏とうまくあった演奏が返ってきた.
3)演奏を自分の望むように盛り上がらせることが できない.
4)演奏があわただしい感じがする.

5.今後の課題

1)短期的な注目度と長期的な注目度も考慮する.
2)注目度の計算方法の再検討.
3)演奏パターンの自動生成手法.
4)注目度と盛り上がり度の関係を取り入れる.