機能概念に基づいた再設計支援知識に関する考察
東出 光喜
1. はじめに

本研究の最終的な目標は,設計者が再設計を行う際にぶつかる問題を解決するアイ デアを提示するシステムを実現することである.このシステムには,以下のようなこ とが要求されると考えられる.
  1. 対象の構造を変える再設計を行えること
  2. 対象のレベルに具体化された再設計案を提示できること
  3. 再設計知識の適用範囲が広いこと
我々は,機能概念を利用することがこれらの条件を満たす鍵であると考える.その 第一歩として,再設計の具体例を用いて再設計に使用すべき知識の整理を行った.ま ず,先行研究であるTRIZ理論を利用したInvention Machineを使用して再設計を行っ た.次に再設計の具体例を分析して,再設計支援システムを構築するにあたり必要とな る知識の抽出を行った.

2. 再設計支援システム

システムへの入力は対象のモデルと改善要求である.システムは,対象の部品が持 つ機能を理解する.そして,改善要求に合う再設計方策をライブラリから選び出し適 用する.方策を選択,適用する際に必要があれば,機能語彙や機能達成関係知識を参 照して対象に沿って詳細化された再設計を行うようにする.そして,適用された対象 の検査を行い,機能的な不具合が発生しないかを調べる.不具合があれば,もどって さらにこれを解消するための再設計方策を選択.適用する.これを繰り返して再設計 案を作成する.再設計案が多数に上れば,比較評価を行ってよりよいものだけを出力 する.

3. 再設計のための知識

3.1 再設計方策の知識
再設計方策は,対象にどのような変更を与えるかを表す知識である.再設計方策は ,何らかの属性を変更することができるものであるが,改善する方向は属性によって 異なる.その属性を変更できる方向も合わせて,これを効果と呼ぶ.また,再設計方 策を行うことによって,不都合が生じる場合がある.これを再設計方策の副作用と呼 ぶ.例えば,方策「構造の分割」は,対象の構造を分割することであるが,「大きさ を小さくする,重さを軽くする」という効果と,「強度が弱くなる」という副作用が ある.機能を追加したり除いたりする場合は,機能語彙を参照してその方策の効果と 副作用とする.

3.2 機能語彙
機能語彙は,対象の部品が持つ機能を表現するための語彙として用意される.この 語彙は,筆者の所属する研究室で開発されている機能モデル表現言語FBRLに基づいて おり,系統的に分類,定義される.この分類により,各語彙に明確な意味定義を与え ることができる.そして,問題解決にも適切な語彙を使うことができる.

3.3 機能達成関係
機能達成関係は,ある機能を達成するために必要となる下位機能が存在する場合に 表される関係である.上位機能とはおおよそ関係が薄い機能が必要となる場合も多い ので知識として用意され,機能語彙とともに使われる.

4. おわりに

機能概念に基づいた再設計支援システムを構築するために,再設計の過程を分析し ,知識を抽出した.今後の課題として以下の点が挙げられる.