認知負荷を考慮したハイパーメディア教材の評価・作成ガイドライン
長谷川 忍
1.序論

学習者の理解を促進する教材を考える際には,教材を理解するために学習者が行う心 的な作業を考慮することが必要になる. 本研究では,学習者の教材学習過程における心的作業を認知負荷と呼び,認知負荷を 学習者に効果的に与えるという観点に立ったハイパーメディア教材の評価・作成ガイ ドラインを提案する.

2.教材学習過程と認知負荷

本研究では教材学習過程を
(1) 現在与えられている教材から必要な情報を選択・抽出する過程
(2) 新しく学習する複数の情報の間を関係づける過程
(3) 新しく学習する情報と学習者の既有知識の間を関係づける過程
(4) 現在の理解状況を評価する過程
に分けている.これらの過程における心的作業をそれぞれ,(1)選択に関する負荷, (2)教材の構造化に関する負荷,(3)知識の構造化に関する負荷,(4)評価に関する負 荷と呼ぶ.
教材が与える認知負荷には,理解を促進するものと阻害するものがあるが,効果的な 教材を作成するためには,いかに理解の促進につながる認知負荷を与え,理解を阻害 する認知負荷を減らすかが問題となる.

3.評価・作成ガイドライン

ここでは,前章で述べた認知負荷をふまえ,教材の構成上考慮すべき点を整理したハ イパーメディア教材の評価・作成ガイドラインを提案する.
これによって,認知負荷と教材構成上考慮すべき点の関係が明確になり,教材の評価 および作成が容易になるという効果が期待できる.

4.ガイドラインの拡張

効果的な教材を考える際には教材の特徴や学習者の特徴によって注目すべき認知負荷 が変化する.このため,評価・作成ガイドラインのすべての項目が常に重要であると は限らない.
そこで,教材の特徴と認知負荷の関係,学習者の特徴と認知負荷の関係を考察する. 本研究では教材の特徴として, また,学習者の特徴として, を取り上げ,それぞれ認知負荷との関係を考察し,ガイドラインの拡張を行った.

5.結論

本研究では,ハイパーメディア教材の評価・作成ガイドラインを認知負荷の観点から 提案した.
今後の課題としては,より多くの検証を行い,評価・作成の両面から現在のガイドラ インをさらに精練することを考えている.